生まれて間もない黄疸。一般的に現れる症状です
生まれたての赤ちゃんの肌が黄色くなる”新生児黄疸”という症状をご存知でしょうか。よく、肝臓が悪いと黄疸が出るという話は聞いたことがあるかもしれませんが、赤ちゃんは、病気がなくても生まれて3~4日目に黄疸が出ることがあります。
赤ちゃんの黄疸は生理的なもので、その多くに特別な治療の必要はありません。しかし赤ちゃんによっては治療が必要になる場合や、何か病気があって黄疸が強く出ることもあります。
赤ちゃんの黄疸、「新生児黄疸」の症状と原因
生まれたばかりの我が子に、急に治療が必要と言われたら、不安になると思います。でも黄疸の原因や治療について正しく知っていれば、怖くはありません。新生児黄疸はよくある症状なので、知識として知っておくようにしましょう。
新生児黄疸の症状
生まれたばかりの赤ちゃんは赤血球の量が多いので、皮膚から血液の赤色が透けてピンク色に見えます。それが生後3日目頃になると、赤ちゃんの顔や白目の部分がやや黄色くなり始めることがあります。
ほとんどの赤ちゃんが生後3~4日後に経験します
この症状を「新生児黄疸」といい、体の中の”ビリルビン”という黄色い色素が増えていることを示しています。新生児黄疸は生理的なものがほとんどで、症状の程度の差はありますが、ほとんどの赤ちゃんが経験します。
新生児黄疸の症状は、生後3~4日目にピークを迎え、生後7日目頃には落ち着いてきますが、まれに長引く場合や、何か原因があって黄疸が強く出ることもあります。
新生児黄疸の原因
新生児黄疸の原因は、ほとんどが赤ちゃんの体の未熟性によるもので、心配の要らない生理的なものがほとんどです。そもそも赤ちゃんは、お母さんの胎内にいるときに、酸素や栄養を全て血液からまかなうので、体内に流れている赤血球の量が大人よりも多い状態です。
産後は、不必要な赤血球をおしっこや便によって排出
出生後は、要らなくなった赤血球を捨てる作業を行ないます。赤血球は、毒性のあるビリルビンという黄色い色素を含んでいるので、肝臓で解毒処理をしてから、おしっこや便として排泄されていきます。
ところが、赤ちゃんの肝臓は未熟なので、処理が間に合わず、血液中にビリルビンが増えてしまうのです。これが、新生児黄疸の原因です。
黄疸は母乳量の授乳とも関係しています
母乳で育児をしている場合、母乳の分泌量がまだ少ない間は、おしっこの量が少なくて黄疸が強く出る場合と、反対に母乳量が多くて母乳に含まれる成分が、肝臓の分解酵素を阻害し黄疸が長引く場合があります。症状が強い場合は、一時的にミルク補足を促される場合もありますが、特に問題のない場合がほとんどです。
まれに、赤ちゃんの肝臓やビリルビンの通り道に病気があったり、赤ちゃんの血液が必要以上に壊される病気があったりする場合、黄疸が重症化します。このときには、黄疸の原因となる病気の治療が必要となります。
赤ちゃんの黄疸「新生児黄疸」の治療とは?
生理的な黄疸の場合、特に治療は必要なく、経過観察で事なきを得ます。しかし上限とされるビリルビン値より高くなっている場合(黄疸が強く出ている場合)は、治療が必要となります。
出産時の状況で、黄疸の症状は変わります
新生児黄疸が強く出るのは、原因不明の場合も多いですが、低出生体重児や早産児など体がより未熟な赤ちゃんや、分娩時に頭に血腫ができてしまった場合などは、黄疸が強く出ることがあります。血腫は、吸引分娩など医療措置の後にまれに見られるものです。
多くのビリルビンが体内に残ると後遺症の危険性……
なぜ黄疸が強いと治療が必要かといえば、ビリルビンには毒性があるから。血液中に毒性を持つビリルビンが大量に残ってしまうと、頭に移行して脳神経に悪い影響を与えるうえ、後遺症を残してしまう「核黄疸」の危険があります。
”光線治療”が、新生時黄疸治療の第一段階です
新生児黄疸の治療を受ける際、第一段階として行なわれるのが光線治療です。光線治療とは、赤ちゃんの皮膚に24時間、紫外線を当てて、皮膚からビリルビンの分解を促すものです。言い換えれば日焼けマシンに入っているようなものです。
紫外線の日焼けマシンでビリルビンをやっつける!
光線治療の方法は、目や陰部に紫外線が当たらないように、アイマスクとオムツをつけて、衣服は全て脱ぎ、紫外線が出る器械が取り付けた保育器に入ります。保育器の中は、赤ちゃんが裸でも寒くないように温度設定されているので、寒くありません。また、痛みや痒みなどもありません。
24時間が経過したらビリルビン値を再度計測し、数値が低下していれば治療は終了です。ただし、次の日にリバウンド症状といって、再度ビリルビン値が上がってしまうことがあるので、その場合は、改めて光線治療が必要になります。
たいていは、1回の光線治療で終了することがほとんどですが、まれに何回か繰り返しておこなわないと、数値が落ち着かない場合もあります。
重症化すると、”交換輸血”で血液の入れ替え
重症の新生児黄疸や、肝臓疾患や病気により溶血が進み、黄疸が強くなっている場合などは交換輸血がおこなわれることもあります。
交換輸血とは、ビリルビン値が高くなった全身の血液を、輸血によって全て交換する治療方法です。交換輸血をおこなうほど黄疸が強くなることは、ほとんどありませんが、まれに重症化した場合におこなわれる治療です。
黄疸の治療が必要となったときにママがすることは?
新生児黄疸の治療である光線治療は、よくおこなわれる治療ですが、生まれたばかりの我が子に治療が必要といわれると、不安になってしまうママは多いです。光線治療は必ず必要な治療なので、きちんと理解して赤ちゃんを送り出してあげましょう。
- 小児科の先生の話しを聞いて理解する
光線治療が必要ですといわれたとき、ママが最初にすることは、小児科の先生の話しを聞いて、治療の必要性やどのような治療をするのかを理解、納得することです。分娩直後で体が辛い場合や、不安が強い場合は家族の人にも一緒に聞いてもらいましょう。 - 光線治療中は、赤ちゃんとママは離れて過ごす
光線治療は、保育器の中でおこなわれるので、ママと赤ちゃんは、丸1日いったん離れて過ごします。赤ちゃんやママの体調に問題がなく、赤ちゃんの哺乳力にも問題がなければ、3時間毎の授乳時間に、通い乳をさせてくれる病院がほとんどです。離れ離れは寂しいですが、授乳時間が来るまではゆっくり部屋で休みましょう。 - ミルク補足が必要になることもある
黄疸の治療には、授乳量を増やすということも大切です。なぜなら、たくさんおしっことウンチを出すことで、ビリルビンの排泄を促すからです。そのため、母乳分泌量がまだ少ない場合は、ミルク補足が必要となります。完全母乳を希望している場合でも、治療の必要性を理解し、指示に従い、ミルク補足を十分におこないましょう。 - 24時間後、治療は終了
丸1日の光線治療が終われば、いったん治療は終了です。治療後、ビリルビン値を計るために採血をした後、問題がなければ母子同室の再スタートとなります。治療後、特にママがしなければいけないことはありませんが、次の日のリバウンド症状を予防するために、もう1日は頻回授乳とミルク補足が必要となる場合があるので、指示に従って授乳をおこないましょう。
新生児黄疸は、きちんと理解して落ち着いて対応を
新生児黄疸は、赤ちゃんの生理的な症状で、ほとんどの赤ちゃんが経験します。場合によっては、黄疸が強く出たり、長引いたりして、治療が必要になることもありますが、必要以上に不安に思うことはありません。
納得するまで小児科医の話を聞いて、治療を受けさせてあげましょう。光線治療に痛みなどはありません。ママと離れ離れになって少し寂しいですが、1日だけなので、落ちついて対応できるようにしておきましょう。