「メガネをかけた人を見ると泣く」「男の人が苦手」「なぜかじいじが近づくと大泣きしちゃう」……。ある日突然起こる「赤ちゃんの人見知り」。せっかくかわいがろうと思って笑顔で近づいてくれたのに、あまりに泣かれると困ってしまいますね。
だけど、人見知りは赤ちゃんの成長の通過点です。その原因が最新の研究で明らかになってきました。
赤ちゃんが人見知りをする理由
同じ兄弟でも、人見知りをする子とそうでない子がいます。また、人見知りが始まる時期も個人差があります。赤ちゃんの人見知りのメカニズムを科学技術振興機構(JST)と東京大学、京都大学、同志社大学、理化学研究所が共同で研究しました。今回はその結果を見ながら、赤ちゃんが人見知りをする原因を解説します。
ママと他人の区別は生後すぐに出来ている!
赤ちゃんの人見知りは、早い子は生後半年くらいから始まります。1歳前後がもっとも多く、2歳を過ぎると自然とおさまるケースが多いようです。
人見知りの原因は、以前は「ママとそれ以外の人の区別ができるようになったから」といわれていました。しかし、最近の研究で赤ちゃんは生まれてすぐの時期から、母親とそうでない人を区別することがわかっています。
人見知りをする子は怖がり?
人見知りをするときの子どもは、何かにおびえるように大泣きをします。いわゆる「ギャン泣き」と呼ばれる状態で、あまり激しく泣いて嘔吐することがあるほど。そして、泣かれた人は大変なショックを受けます。ママしかダメというケースが多いようですね。
「こんなに人見知りをするなんて。このまま大きくなったら、友だちの輪に入れないのでは?」「気が小さい怖がりなのかしら?」と心配されることもあります。しかし、研究の結果、人見知りは怖がっているのではないということがわかってきました。
【研究者の疑問】
- 赤ちゃんに「怖い」という感情が芽生えるのは、生後半年以降
- 喜びやうれしいといった「快」の感情が芽生えるのは生後2~3ヶ月
- 怖いのならば見なければいいのに、人見知りをするときは必ず相手を見る
怖いから人見知りをするのならば、どの子も生後半年の「怖い」という感情が芽生えるころに人見知りが始まるはずです。ところが人見知りが始まる時期には個人差があるため、必ずしも「怖い」という感情が芽生える時期とは一致していません。
それに、怖ければ見なければいいのに、なぜか人見知りする赤ちゃんは相手の顔をじっと見ています。そこで研究グループでは、赤ちゃんがどのように他人を見ているのか、生後7ヶ月~12ヶ月の赤ちゃん57人を対象に調査しました。
【実験1】赤ちゃんは相手の顔のどこを見ている?
赤ちゃんが他人の顔の目・鼻・口のどの部分をよく見ているかを調べた結果、人見知りの強い赤ちゃんほど相手の目を特に凝視していることがわかりました。
【実験2】真正面の顔とよそ見をしている顔、どちらを見ている?
赤ちゃんを正面からじっと見る人と、よそ見をしている人で実験した結果、人見知りの強い赤ちゃんほどよそ見をする人を長く見ていることがわかりました。逆に自分を正面からじっと見る人からは目をそらしています。
人見知りが少ない子はその逆で、自分を正面から見る人の方を長く見ているという結果が出ています。
結論~人見知りの赤ちゃんは、本当は相手に近づきたい!
実験から、人見知りが少ない子は自分から相手に近づこうとするために、真正面から相手を見ようとします。
一方、人見知りが強い子は
- 相手の目を見る=気になる・興味がある・近づきたい
- 真正面の顔は避けて、よそ見している顔を見る=相手から離れたい気持ちがある
という相反する反応を示すため、「本当は相手に近づきたいけれど、ちょっと怖い」という気持ちがあることがわかってきました。怖がりの気質があるけれど、好奇心旺盛な部分もあるということがわかっています。
つまり、人見知りをするということは、その人に興味があるけれど、不安、怖いという気持ちがあって、赤ちゃん自身が揺れているということなんです。小さくても複雑な気持ちを持っているんですね。
なお、この時期の人見知りがその後もずっと続くということではありません。一過性のもので、学童期やおとなになってからの人見知りや怖がりとの関係はまだわかっていません。あまり心配せずに、「本当はその人に興味があるんだな」と理解してあげてくださいね。