下の子が生まれたときのお兄ちゃんやお姉ちゃんの赤ちゃん返りに苦労されている方も、多いのではないでしょうか。赤ちゃん返りは仕方がないと分かっていても、今までできたことができなかったり、何でもイヤイヤと言われたりするとついイライラしてしまうものです。
「赤ちゃん返り」は成長の証です
でも実は、赤ちゃん返りによって成長が逆行しているわけではなく、まさに成長の証であり、成長のステップなのです。上の子がうまく赤ちゃん返りを卒業できるよう、またママがうまく赤ちゃん返りとお付き合できるよう、赤ちゃん返りの意味や原因、対処法についてお話しようと思います。
赤ちゃん返りってなに?
赤ちゃん返りとは、今までできていたことが急にできなくなったり、何でもイヤ!と嫌がったり、一見わがままに見える行動を取ることをいいます。原因は、ストレスに対するストレス対処行動であったり、特にストレスがなくても成長の一過程として起こったりします。
赤ちゃんから幼児になるまでの精神の発達
赤ちゃんは生まれてから生後5か月目位までは、自分とママは一心同体の存在だと思っています。おっぱいを吸って抱きつきながら、常にママと一緒にいることで強い愛着を感じています。そして、泣けばすぐに安心と食べ物と保護を与えてくれるママがいるからこそ、赤ちゃんは安心して過ごすことができるのです。
一心同体から別の存在に気づくのは生後半年くらいから
5~6か月頃になるとママと自分は違う存在であることに気付き始めます。さらにママと他人を見分けられるようになり人見知りが始まります。9か月以降になると、ママと離れることに不安はあるものの、周囲への興味や行動範囲が広がるので、ママの近くでなら一人遊びができるようになります。
そして、1歳を過ぎる頃になると、ママから離れようとする気持ちと離れると不安になる気持ちが共生するようになります。そのため、1人で遊んでいても、不安になるとママのところに戻ってくるという行動をよく起こすようになります。ママの元に戻って安心感が得られると、またママから離れて一人で遊び始めます。
他への興味とママとの共存意識は2歳くらいまで続きます
この相反する行動を起こす時期は2歳頃まで続きますが、子どもにとってはママから離れる危機を常に感じているので、この時期は不安を強く感じたり、わがままになったり、混乱したりすることがよくあります。
ですが、このくっついては離れてを繰り返す時期があるからこそ、徐々にママから離れても大丈夫と思える耐性ができるようになっていくのです。
赤ちゃん返りの原因
このように赤ちゃんから幼児期にかけては、ママから離れるときとべったり甘えるときを繰り返しながら徐々に成長するので、昨日1人でできたから今日からもできるというわけではなく、できないイコールわがままという訳でもないのです。
さらに、自分の安全基地であるママを奪う存在である赤ちゃんができると、上の子の不安はかなり強くなります。安全基地を取り戻そうと泣きわめき、反抗し、必至にママに訴える行動に出ます。これが「赤ちゃん返り」といわれる行動です。
つまり、赤ちゃん返りは子どもの通常の反応であり、成長の一過程といえるのです。このときにママからの「安心感」を再確認させてあげることが、赤ちゃん返りをスムーズに卒業できる唯一のポイントとなるのです。
兄弟が生まれたときの赤ちゃん返りの対処法は?
1) 下の子を置いて、上の子を抱きしめる時間をつくる
上の子が一番に求めていることは、ママからの安心感を再確認することです。それを一番に感じられるのは、ママから抱きしめてもらうことです。自分が赤ちゃんのときにいつもしてもらっていた「抱っこ」が一番効果的です。
赤ちゃんと同じように抱っこするのがミソ
ここでポイントなのは、わざと下の子を横に置いて、上の子を赤ちゃんと同じように抱っこしてあげることです。このことにより、上の子は赤ちゃんからママを取り戻し、ママを独り占めできたと満足感を得るとともに安心感を得ることができます。
一心同体に戻ったかのように頬と頬をつけ、強く抱きしめママの温もりと愛情を存分に感じさせてあげてください。
2) 「あなたが一番大好きよ」と言葉で伝える
上の子が安心感を再確認するためには、ママからの言葉も大切な要素です。決して「もうお兄ちゃん(お姉ちゃん)でしょ」や「一人でできるでしょ」、「できないなんて恥ずかしいよ」などという言葉をかけてはいけません。
また、赤ちゃんを一番に扱うような言葉もかけないようにします。例えば「赤ちゃんがかわいそうでしょ」「赤ちゃんが泣いているから仕方ないでしょ」など、上の子より赤ちゃんが大切だと思わせるような言葉は避けます。
できるだけ、わざと「あなたの方が大切よ」「あなたが一番大好きよ」など上の子を優先させるような言葉をかけます。
ママから最優先の愛情を感じて、初めてあかちゃんにやさしさを持てます
そんな言葉をかけると赤ちゃんに対してマイナスな感情を持つのでは?と心配されるか上もしれませんが、上の子はママからの愛情が最優先に自分に向いていると満足すると、下の子にも愛情を注げるようになります。愛情とは、自分のコップに溢れるほど感じてこそ、他の人に与えることができるのです。
赤ちゃん返りが落ち着いてきたら、今度は上の子が下の子に向ける愛情を感じたときに十分ほめてあげてください。「お兄ちゃん(おねえちゃん)に優しくしてもらって赤ちゃん嬉しそうね」や「赤ちゃんのこと助けてくれてありがとう、ママ助かるわ」などです。
3) わざと赤ちゃん扱いをする
赤ちゃん返りがひどい間は、赤ちゃん返りを否定せず、受け入れるようにすることが大切です。反対にわざと赤ちゃん扱いしてあげるくらいでも大丈夫です。おっぱいを吸わせてあげる、一日中べったり抱っこしてあげる日を作る、ママが全て食べさせて、着替えさせてあげるなどです。
日常の失敗は、大きな気持ちで受け止めて
成功していたトイレットトレーニングの失敗もよくありますが、全く問題はありません。叱ったり、どうしてできないの?と悩む必要はありません。そんな時期なのねとゆっくり構えてあげましょう。
4) 必ず名前で呼んであげる
赤ちゃんができるとつい「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と呼んでしまいがちですが、できるだけ名前で「○○ちゃん」と呼んであげるようにします。上の子が自分からお兄ちゃんやお姉ちゃんという位置づけに納得ができるまでは、無理やりお兄ちゃんやお姉ちゃんのレッテルを張らないようにすることがポイントです。
5) 下の子と上の子の優先順位をつける
上の子にとって赤ちゃんは「邪魔な存在」「ママを奪う存在」でしかありません。この時期に追い討ちをかけるように、赤ちゃんを優先させてしまうと、上の子はさらに不安と恐怖を感じ赤ちゃん返りが強くなってしまいます。
そのため、できるだけ上の子を優先させるようにします。赤ちゃんが泣いていても待てるようなら、上の子の育児を優先させます。言葉でも「あなたが先ね」「赤ちゃん待っててね」と伝えます。
安心感を得たら、赤ちゃんに順番が譲れるように
上の子がママからの安心感を十分取り戻すことができると、自分から「赤ちゃんが泣いているから抱っこしてあげて」「赤ちゃんを先にしてあげて」と言える余裕が出てきます。それまでは、上の子を極力優先させてあげるとよいでしょう。
6) 焦らない
赤ちゃん返りの対処で一番大切なことは、ママ自身が焦らないことです。今までできたのにどうしてできないの?と思う必要はありません。できていたことができなくなるのも、泣いて癇癪(かんしゃく)を起こすのも成長の一つと諦めてしまうことも大切です。
赤ちゃん返り=成長と喜ぶ気持ちで接しましょう
そして何より、赤ちゃん返りをするということは、今までママからの愛情を十分に感じていたという証拠なのです。愛情をきちんと感じていたからこそ、離れることが不安になるのです。赤ちゃん返りは我が子の成長だと喜んであげるべきことなのです。
赤ちゃん返りの程度や長さは”個人差がある”ことも理解して
赤ちゃん返りが成長の一つであることを説明してきましたが、赤ちゃん返りは、全ての子がこれだけの期間あり、この程度あるなどという定義はありません。赤ちゃん返りをしない子(少ない子)もいれば、強い子もいます。短い子もいれば長い子もいます。
あくまでも子どもの成長は個人差があるので、赤ちゃん返りの有無や程度で成長の有無を判断することはできません。赤ちゃん返りも我が子の個性だと認めて、ゆっくりゆったり関わってあげることが大切ですね。