赤ちゃんがダウン症の確率や検査、知っていますか?
高齢妊娠は、ダウン症の赤ちゃんが生まれる可能性が高くなる、という知識はほとんどの方が持っていると思います。ですが、ダウン症が生まれる確率や、ダウン症とはどんな病気かということまで知っている人は少ないと思います。
35歳以上で妊活中の方なら、ぜひ、ダウン症のことについて基本的なことは知っておくようにしましょう。妊娠中にできる検査やダウン症の種類、症状などについて詳しく解説します。
ダウン症とはどんな病気?
ダウン症は、”染色体異常”がおこる病気です
人間は、22対の常染色体と1対の性染色体を持っていて、人は全てこの染色体によって、遺伝情報が伝わっています。この染色体の突然変異によって異常が起こる病気がダウン症であり、21番目の染色体が1本多い病気です。
染色体の本数の違いで、遺伝情報が伝わりにくい
21番目の染色体が1本多いと遺伝情報がうまく伝わらないため、さまざまな症状や合併症、特有の顔ぼうなどを持って生まれてきます。現代の治療では、染色体異常そのものを治療することはできません。そのためダウン症の症状に対する対症療法と、療育などがおこなわれ支援されています。
ダウン症の症状や特徴
ダウン症と一言でいっても、個人によって、さまざまな症状があります。特に多い症状や合併症を見ていきましょう。
知的障害
ダウン症の約80%が知的障害を合併していて、知能指数は50前後、8歳~9歳くらいの知能といわれています。
難聴
約60%に中耳炎や難聴などを合併します。症状の程度は、軽度から重度までさまざまで、補聴器や薬物療法などによって対処されています。
心臓疾患
ダウン症の約40%に先天性の心臓疾患の合併が見られます。さまざまな種類の心疾患の合併があり、早期発見と早期治療が重要です。多くは外科治療によって対応されています。
頚椎の不安定さ
約15%に首を支える骨の頚椎が不安定になる症状が現れます。頚椎の不安定さがあると、頚椎の中を通る神経が圧迫され、運動麻痺や感覚麻痺につながることもあります。症状の程度によって、手術や生活指導がおこなわれます。
その他にも、将来的に、てんかんや甲状腺機能低下症、糖尿病、白血病などを合併する確率が高くなります。
身体的な特徴としては、特徴的な願つきや、低身長、肥満、筋力の弱さなどがあります。性格は個人差がありますが、多くのダウン症患者は、陽気、優しい、人懐こいといわれます。一方で、頑固、気分屋などの特徴もあるといわれています。
ダウン症の種類
ダウン症は、染色体異常の起こりかたによって、「標準トリソミー型」「転座型」「モザイク型」に分けられています。
標準トリソミー型
ダウン症全体の90~95%を占めているタイプで、体の細胞の中にある全ての21番目の染色体が1本多くなっています。原因は、染色体の突然変異で、両親は正常な染色体を持っています。
転座型
ダウン症全体の5~6%の割合で存在します。このタイプは、21番目の染色体の1本が、他の染色体にくっついている状態です。原因は、半数が染色体の分離がうまくいかなかったもので、両親の染色体に異常はありません。もう半数は、遺伝性で、両親に転座型の染色体保因者がいる場合があります。
モザイク型
全体の1~3%でもっとも少ないタイプです。モザイク型は、正常な細胞と21番目の染色体が3本ある細胞が混在しているタイプです。混在する割合は人それぞれで、異常な染色体が少ないほど、症状の程度は軽いです。重症の障害を持つ人は少ない場合が多いです。
ダウン症の確率と検査
ダウン症が生まれる確率
ダウン症は、高齢妊婦からだけ生まれるわけではなく、全妊婦に一定の割合で出生しています。ところが、高齢になると、受精卵の細胞分裂に異常がおこる確率が高くなるため、ダウン症が生まれる確率も高くなってしまうのです。
20代でダウン症を出産する確率 | 約1600~1200人に1人 |
30~34歳でダウン症を出産する確率 | 約900~500人に1人 |
35~37歳でダウン症を出産する確率 | 約300~200人に1人 |
38~39歳でダウン症を出産する確率 | 約170~130人に1人 |
40~43歳でダウン症を出産する確率 | 約100~50人に1人 |
このように、35歳を過ぎると確率が顕著に上がってくるのが特徴です。基本的に、初産婦と経産婦によって割合の差はありません。
ダウン症の検査
エコー検査(確率診断)
妊娠中のエコー診査で、ダウン症の疑いが分かります。ですが、可能性だけで確定診断はできません。
- 検査時期:12週~14週頃
- 検査方法:採血(確率診断)
エコーによって、胎児の全身や、特に首の後ろの浮腫みの厚さを計ることで分かります。その他にも、ダウン症の身体的特徴である骨格や心疾患の有無などを見て判断します。
血清マーカー検査
妊婦から血液を採取し、血清マーカーを調べることでダウン症の疑いを確率で出すことができます。精度は86%程度で、もちろん確定診断はできません。
- 検査時期:妊娠15週~26週
- 検査方法:採血
新出生前診断
妊婦から血液を採取し、血液中の遺伝情報を解析してダウン症の確率を出します。血清マーカーより精度が高く、陰性である的中率が、99%といわれています。
- 検査時期:10週~18週
- 検査方法:採血
羊水検査(確定診断)
羊水中の胎児の細胞組織を調べることで、ダウン症の確定診断を行なうことができます。精度は99%以上ですが、処置が原因による流産や感染がまれに発生します。
- 検査時期:妊娠15週~18週
- 検査方法:妊婦の腹部から針を刺して、直接、羊水を抜き取って調べます。
絨毛検査(確定診断)
胎盤になる前の絨毛組織を取って、ダウン症の確定診断をおこなうことができます。精度は98%以上ですが、処置が原因で流産や感染もまれに起こることもあります。
- 検査時期:妊娠9週~13週
- 検査方法:妊婦の腹部から直接針を刺して、絨毛組織を採取して調べます。
ダウン症の検査は、リスクや高額になる検査もあるので、年齢やエコー診査での疑いなど、色々な背景によって検査方法を医師と決定する必要があります。
ダウン症の可能性があると言われたら
ダウン症の可能性があると言われたら、誰もがショックを受けます。障害があっても大丈夫とは簡単には言えません。また、中絶の是非や考え方もいろいろです。
ダウン症は、年齢に関係なく全ての妊婦さんに生まれる可能性があります。そのため、まずはダウン症とは何かという知識を得ることから始めることが大切です。
そして、もしダウン症の疑いがあると言われた場合は、検査やこれからのことについて、医師や専門職、実際にダウン症を持つご家族などさまざまな人からのサポートを受けて、これからのことを納得できる形で答えを出すことが大切です。