赤ちゃんの離乳食を始める前の果汁は必要?

離乳食期に果汁をあげるタイミング

赤ちゃんが生後5~6カ月頃になれば離乳食が始まりますが、それまでの準備として果汁の補足や果汁を飲む練習は必要なのでしょうか?

私たちの親世代は子育て当時、水分補給やミルク以外の味に慣れるため、ビタミン補給などの理由から果汁を与えるように指導されていました。そのため私たち子世代の育児シーンに関わる中で、赤ちゃんが生後3~4か月になると「そろそろ果汁を…」と言い出す親世代も多いと思います。

ですが、最近は母乳やミルクだけでよいといわれることも多く、混乱してしまいますよね。今回は、赤ちゃんが離乳食を始める前の果汁は必要なのかと、果汁のあげ方についてもお話ししたいと思います。

果汁とはなに?昔はどうして飲ませるようにいっていたの?

果汁とは、いわゆる果物味のジュースのことではありません。砂糖や添加物を一切加えていない果汁100%の飲み物をいいます。そのため、「りんごやみかんなどの果物を絞ったもの」が果汁です。

市販の100%果汁やジュースは便利ですが、よく表示を見てみると添加物や砂糖が添加されているものもあります。飲ませるときは、できるだけ100%果汁のみのものを選択する必要があります。

果汁はミルク以外の味に慣れさせる、栄養の補足のためのもの

さて、果汁を飲ませていた親世代の保健指導では、なぜ離乳食が始まる6か月未満の赤ちゃんに「果汁を飲ませましょう」と指導していたのでしょうか。理由には、水分補給やミルク以外の味に慣れる、ビタミン補給などが上げられます。昔は粉ミルクの品質が完全ではなく、ミルクだけだとビタミンが足りなくなる恐れがあったことや母乳への価値観の違いから、早くから果汁を補足するよう指導していました。

ですが、現在は粉ミルクの栄養成分はほぼ母乳と近くなり、栄養不足になることもありませんし、母乳育児への考え方も変わってきました。さらに、早くから果汁を与えることへの弊害も明らかになってきているので、果汁補足への考え方が変わってきているのです。

離乳食前の果汁補足は必要ないの?

現在、果汁の与え方については、厚生労働省のガイドラインによると「離乳食開始前の果汁に栄養学的な意味はない」として、”不要”扱いになっています。離乳開始前に果汁を始めることで、逆に弊害が生じると考えられているからです。

果汁摂取で心配なのが、母乳やミルク摂取量の減少

近年は果汁を摂取することで、乳汁の摂取量が減ると考えられ始めています。また、たんぱく質、脂質、ビタミン類、鉄、カルシウム、亜鉛などミネラル類の摂取量が減り、乳児期以降の果汁の過剰摂取と低栄養や発育障害の関わりが指摘されています。

他にも、早すぎる果汁の補足は、赤ちゃんの胃腸への負担を増やし下痢を起こしたり、アレルギーを引き起こしたりする危険性が指摘されています。

そのため現在は、離乳食開始前の栄養や水分の補足は母乳や粉ミルクのみでよいとされ、果汁のスタートは、離乳食の一環として与える(生後6カ月以降~)という考え方に変わっています。

果汁はどうやって与えたらいいの?

では、果汁はいったいいつから、どのようにあげればよいのでしょうか。先ほどから離乳食が始まる前の果汁は必要ないことや、その弊害についてお話ししてきたので、果汁があたかも悪者のように思われる方もいらっしゃるかも知れません。

でも、果汁は果物100%なので、うまく利用すればとても栄養価の高いものです。赤ちゃんの体に負担がなく、栄養素もうまく取り入れられる与え方について知っておきましょう。

【果汁の与え方】

  • 果汁を始める時期
    生後5~6以降が目安ですが、アレルギーが気になる場合は適宜様子をみながら始めます。
  • 果汁の与え方
    最初はアレルギーが少ないとされるお粥やじゃがいも、野菜などからスタートし、問題がなければ果物、果汁へと進めます。最初は1さじからスタートさせ、アレルギーが気になる場合は加熱したり、薄めたりして与えます。また調理に少量使用するのもよいでしょう。
  • どんな果物がよい?
    りんご 胃腸にも優しく、離乳食初期から食べさせても大丈夫です。酸味が気になる場合は加熱しましょう
    いちご ビタミンCが豊富で、離乳食初期から食べさせて大丈夫です。種が気になるので裏ごしして果汁にして与えましょう。やや胃酸を多く出させるので、胃腸の調子が悪いときは避けます。
    いちご ビタミンCが豊富で、離乳食初期から食べさせて大丈夫です。種が気になるので裏ごしして果汁にして与えましょう。やや胃酸を多く出させるので、胃腸の調子が悪いときは避けます。
    みかん 離乳食初期から食べさせても大丈夫ですが、薄皮は取って果肉だけで果汁にします。やや胃酸を多く出させるので、胃腸の調子が悪いときは避けます。
     バナナ  離乳食初期から食べさせても大丈夫です。果汁にはなりにくいですが、糖分も高く胃腸にも優しいので、すりつぶして食べさせるとよいでしょう。
     桃  離乳食初期から食べさせられますが、アレルギーをおこすこともあるので様子を見ながら加熱して少量から始めましょう。
     スイカ  離乳食初期から食べさせられます。水分が多く果汁にも向いています。
     メロン  離乳食初期から食べさせられますが、アレルギーをおこすこともあるので様子を見ながら加熱して少量ずつ始めましょう。
     ぶどう  離乳食初期から食べさせて大丈夫です。一粒が小さく果汁にするのが大変ですが、そのまま与えて喉を詰らせないようにしましょう。
     梨  離乳食初期から食べさせて大丈夫です。すりつぶして果汁にして与えましょう。
     柿  柿は離乳中期以降から与えます。固くて食べにくいので、中期でもすりつぶして果汁にしてから与えましょう。
     キウイ  酸味が強く赤ちゃんには刺激があるので、離乳食後期以降にスタートします。アレルギーにも注意して最初は少量ずつ与えます。
  • 離乳食にNGな果物
    パイナップルやパパイヤ、マンゴーなどは赤ちゃんの消化吸収能力では分解出来ない酵素が含まれているので離乳食では与えません。また、グレープフルーツなど酸味と苦味が強い果物も離乳食には向かないので避けます。外国産の果物やフルーツ缶などの使用も避けましょう。

果汁や果物は、栄養価が高い。上手に利用しましょう

果汁や果物は、とても栄養価が高いですし、調理もしやすく赤ちゃんも大好きなたべものです。なので、開始時期やあげ方さえ注意すれば、離乳食期にはとてもすぐれた食材です。アレルギーや胃腸への負担、果物の形状に気をつけながら用いるのは、他の食材も同じですので、あまり必要以上に神経質になる必要はありません。

赤ちゃんの様子を見ながら、バナナやりんご、みかんの果肉を絞った果汁やすり潰しから始めると、スムーズに離乳食に取り入れられるでしょう。赤ちゃんがたくさんの果物を楽しめるよう、工夫して食べさせてみてくださいね。

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