赤ちゃんの不慮の事故というと、どんなものが思い浮ぶでしょうか。事故というと外出先での交通事故や転落などが思い浮かびそうですが、実は、家庭内の事故が一番多いことが分かっています。
不慮の事故。赤ちゃんの死亡原因の上位にランク
厚労省が調べた赤ちゃん(0歳児)が死亡する原因の第4位にランクインしているのが「不慮の事故」(平成25年度人口動態統計より)。そして1歳~4歳までの幼児における死亡原因の第2位にも「不慮の事故」がランクイン。行動範囲が広がると共に、不慮の事故による死亡が多くなっているのがわかります。
また不慮の事故の中でも、「不慮の窒息」が主な原因です。つまり、誤飲やお風呂場での溺水事故が多いということが分かります。
赤ちゃんの他の死亡原因が、先天性奇形や出産時の呼吸障害、乳幼児突然死症候群であるのに対して、不慮の事故だけは唯一、親が気をつけることで防げるものです。大切な我が子の命を守るためにも、お風呂場での事故が起きる前に、気をつけられることがあるはずです。
入浴する赤ちゃんの事故原因ってどんなものがあるの?
その中でもお風呂場での具体的な死亡事例を上げると、転倒や溺死、溺水、誤飲、やけどなどが原因となっています。ハイハイやつかまり立ち、一人歩きなど行動範囲がぐっと増える8~10か月頃からは特に注意が必要ですね。
また、乳幼児の死亡事故が起こった際の保護者からは、「ちょっと目を離した隙に」、「動けないと思っていたのに……」、「夫(妻)が見ていると思っていた」、「バタバタしていて……」などといった言葉が聞かれます。つまり、親の育児慣れや気の緩みが出てくる頃にも注意が必要なようです。
お風呂場での事故、さまざまな場面
お風呂場で起こる事故の発生状況には、どんなものがあるかも知っておきましょう。
- 母子で入浴している際、母親がシャンプーをしている間にベビーバス内のお湯で溺れた
- 父親が赤ちゃんを抱っこして浴槽に入ろうとしたとき、足を滑らせ転倒した
- 浴槽の蓋の上に赤ちゃんを乗せて体を洗っていたら、蓋がずれて溺れた
- 5cmの残り湯で水遊びをさせていて、親が一瞬その場を離れた隙に溺水していた
- 入浴以外の時間に、ちょっと目を離したらハイハイしながら一人で風呂場に入ってしまい溺れてしまった
- シャンプーや洗顔の蓋を口に入れて、誤飲してしまった
- 父親のかみそりを触って怪我をしてしまった
いかがでしたか?どれも親にとっては「まさか」というタイミングで事故が起きているのがわかります。子どもは昨日できなかったことが今日できるようになる場合があります。昨日まで行けなかった場所も、今日は一人で行ってしまうことがあります。
何でも口に入れてしまうことや、じっとしていられない、好奇心が旺盛など、それぞれの子どもが持つ性格や特徴のちょっとした隙間で事故は起こってしまうのです。
お風呂場での事故を起こさないために
お風呂場での事故を起こさないために、親ができることを知っておきましょう。
お風呂場では決して一人にさせない!
一人座りができたり一人遊びができるようになると、つい目を離してしまいがちです。特にお風呂場では、ほんの少しの時間だからと気を緩ませず、必ず子どもから目を離さないようにしましょう。
シャンプーや洗顔など親が目をつむるタイミング
例え一緒にお風呂に入っていても、シャンプーや洗顔で目を離した隙に、転倒や溺水をしてしまう場合があります。目をつむってしまうシーンは特に注意が必要です。
シャワーの音など赤ちゃんの声が十分聞こえなくなるときも注意
目を離したときだけでなく、シャワー音などの雑音で赤ちゃんの声や音が聞こえなくなる瞬間にも気をつけたいところ。ほんの一瞬の間に溺れていたというケースがありますので、注意が必要です。
風呂場には残り湯を残さない!
残り湯を残しておくと、赤ちゃんが知らない間に風呂場に入ってしまったときに溺れてしまう危険性があります。必ず抜いておくようにしましょう。
風呂場の扉は必ず閉めておく
赤ちゃんの行動範囲が広がると、一人で色んな場所に行ったり、引き戸だと一人で開けて入ってしまうこともあります。お風呂場に勝手に入ってしまわないように、場合によっては鍵をかけて扉を閉めておくことが大切です。
浴槽の高さが50cm以下の場合は、転落の可能性
お風呂場の床から浴槽の高さが50cm以下の場合は、イスや桶によじ登って浴槽の中に転倒してしまう危険があります。目を離さないようにすることと、イスや桶の置き場所にも注意しましょう。
蛇口から出る湯温の熱さに気をつけて!
蛇口から出る湯温を高めにしていると、子どもが蛇口を触ったりしたときに熱い湯が垂れたり、蛇口自体が熱くなっていて火傷をしてしまうことがあります。また、蛇口をひねってお湯を出してしまう可能性もあるので、湯温には注意が必要です。
シャンプーやかみそりなどは手の届かないところに置く!
子どもにとってはシャンプーやかみそりはおもちゃの一つです。なんでも口に入れたくなる年頃だと、すぐ口に入れたり、蓋を開けてなめてしまうので注意しましょう。
滑りやすい床には滑り止めマットを敷く
伝い歩きや一人歩きを始める頃は、特に”転倒”への注意が必要です。また抱っこして注意を払っているはずの親が足元を滑らせてしまうケースもあるので、滑り止めマットを敷いておくとよいでしょう。
もしお風呂場での事故が起こってしまったら
もしお風呂場で事故が起こってしまったときは、慌てず対処できるように、それぞれの対処法や応急処置を知っておきましょう。
転倒・転落したら
頭を打ったときは、意識、けいれん、嘔吐などの症状がないか確認し、あればすぐに救急外来へ行きましょう。症状が後になって出ることもあるので、1~2日は子どもの様子を観察します。
意識が無いとき、まずは意識の確認を
軽く体をたたき名前を呼んでも返答が無い場合は、その場を離れず応援を呼び、一人は応急処置、もう一人は救急車を呼びます。一人のときは、まず応急処置を行ない、その後、救急車を呼びます。
気道の確保。テクニックを把握しておきましょう
顎を軽く持ち上げ、気道を確保して息をしているか確認します。息が無ければ人工呼吸をおこないます。
- 顎を上げた状態で子どもの口と鼻(もしくは鼻)を親の口で覆い、ゆっくり2回ほど子どもの胸が膨らむ程度に息を吹き込みます。胸が膨らまない場合は再度おこない呼吸の回復や手足の反応などを確認します。
それでも反応が無ければ心臓マッサージをおこないます。 - 乳頭と乳頭の真ん中より人差し指1本分下のところを5回(0.6秒に1回の早さで押すイメージで)押します。その後は、人工呼吸1回+心臓マッサージ5回を続け救急車を待ちます。
溺れたとき
ただちに赤ちゃんを湯から引き上げ意識を確認します。意識があれば体を拭き、バスタオルや毛布でくるみ病院へ連れて行きいます。意識がないときは窒息の恐れがあるので、お腹を押して水を吐き出させたりせず、人工呼吸と心臓マッサージ(上記参照)をおこないます。
シャンプーや洗剤を飲んだ
- 苦くて飲み込めないことが多いですが、飲んでしまったときは少しなら口をゆすいで水か牛乳を飲ませて様子を見ます。(月齢が低い場合は母乳or白湯)
※咳をしている、息の仕方がおかしい、顔色が悪い、ぐったりしているなど様子がおかしい場合は、ただちに病院に連れていく。 - たくさん飲んでしまった場合は、胃粘膜の保護のために牛乳や母乳、ミルクを飲ませて、ただちに病院にいきます。
※無理に吐かせると窒息や食道の刺激になるので基本的には吐かせません。また吐かせるかどうかは種類によっても違うので病院に電話して確認しましょう。
火傷をした
- 広範囲の火傷、化膿している、水ぶくれができているなどの場合にはすぐに病院へ行く、緊急性があるときは救急車を呼びます。
- 20分以上流水で冷やします。流水で冷やせない場所や嫌がる場合は保冷剤や氷を入れた袋で冷やします。
- 水ぶくれはやぶらないようにする。
- 火傷の薬は市販薬ではなく医療機関で処方された薬を塗りましょう。薬を塗る必要があるときは病院を受診します。
子どもからは決して目を離さないことが大切
生まれたばかりのときは心配でずっと見ていた赤ちゃんも、成長とともにできることが増え、目を離すことも多くなってしまいます。ですが、一人でできるようになった頃から、不慮の事故は多くなっていきます。
乳幼児は思いもかけない行動をしたり、早いスピードで成長してどんどんと行動範囲を広げていくので、過信せず子どもから目を離さないようにしましょう。大切な我が子を守ってあげられるのは親だけといっても過言ではないのです。